
心に響く合唱をしよう
ここでは学校の音楽教育でも多くの時間を占める合唱を取り上げます。「教材編」「パート練習編」「合唱練習編」としてお送りします。筆者は合唱部の出身であり、声楽専攻。大学院卒業後はプロフェッショナルな合唱指揮者としての経験もあります。しかしながらその経験がただちに子どもの豊かな合唱を生み出すことには繋がりません。合唱は大人の指導とはかなり違った指導が必要になります(器楽の場合はそれほどではない)。
よく聞かれる質問に、「ICTを活用した合唱の授業は効果的ですか?」というものがあります。答えは「明確にNO」です。合唱においてアナログに勝るものは基本的にないのです。あるとすればパート練習における動画の活用でしょうか。歌詞の字幕があったり、楽譜がどんどん進んでくれるようなパート練習の動画は音取りの導入としてとても使いやすいいです。YouTubeにもたくさん上がっていますし、JOYSOUND合唱練習なども今はあります。詳しくはパート練習編を参考にしてください。
よりよい曲の選び方
授業の中で音楽的な見方や考え方を育てることを目的として合唱を行う場合には、教科書に掲載されている合唱曲を選ぶのがおすすめです。これらの楽曲は、長年にわたり全国の中学校で親しまれてきたものが厳選されており、学年に応じたレベルで無理なく取り組むことができます。
中学校では、合唱コンクールや合唱祭を実施している自治体も多く見られますが、こうした行事に向けては、市販の合唱曲集を教材費で購入することを推奨します。授業内でコピーを使用することも一定の範囲で認められていますが、作曲者や作詞者の権利を守るためにも、数百円で数年間使用できる曲集を購入することが望ましいでしょう。
毎年新たな楽曲との出会いもあり、曲集を購入したうえで必要に応じてコピーして使うことも可能です。そのような方法で、音楽に対する理解や関心をさらに深めることができます。
それではどんな曲集を買って、どんな曲を選べば良いでしょうか?ここでは大きく3分類を作りカテゴライズしてみます。優れた作品は様々な側面を持っており、ここでの分類は便宜的なものですのでご理解ください。
1.芸術的な合唱曲
中学生だけでなく、一般の合唱団でも歌われる合唱曲を作曲する作曲家。および合唱曲以外も作曲活動をする作曲家の作品。木下牧子、信長貴富、松下耕、佐藤眞、相澤直人などが挙げられます
2.教育的な合唱曲
学校の先生で作曲活動をする作曲家や、中学生向けの合唱曲を作曲することを主にしている作曲家。山崎朋子、杉本竜一、弓削田健介などがあげられます。
3.Nコンを含むポップスの合唱曲
いきものがかりやOfficial髭男dism、ゆず、miwa、森山直太朗など挙げればきりがありません。NHKのこうした課題曲の路線は賛否はあれど、合唱人口の裾野を広げた功績はだれも否定できません。
仮の分類を作ってみましたが、基本的に2から導入を行い、1に進むべきです。その際、動機づけなどの必要に応じて3を取り入れるのがよいでしょう。
2の合唱曲は本当によくできていて、もはや芸術と呼べる作品も数多くあります。ほとんどが簡易な前奏、斉唱、歌いやすい音域や親しみやすい歌詞で構成されており、子どもが歌うと感動を呼ぶ作品になっています(大人が歌うとやや真っ直ぐすぎることがあります)。
1は変拍子があったり、複雑な和音で作曲家の世界観が表現されます。しかしこうした曲を歌い込むごとに音楽的な喜びを感じるのは子どもも例外ではありません。2が教室での出来事や、友人関係など10代の悩みに寄り添っているのに対し、1では自然や宇宙、哲学的な歌詞が多いです。
3送会、6送会などの行事での合唱や、モチベーションをあげるためなどにNコン、ポップスの曲を取り入れるのも良いでしょう。特にNコンの曲は歌詞や音域、編曲などが合唱部の児童生徒が一夏を過ごすのに充分応えるような仕上がりになるよう細部まで検討されています。原曲のもつメロディや歌詞の芸術性はばらつきがあるのですが、どの曲をどのクラスや学年に選んでも大きく的外れになる事がありません。
